JAXのヒト化マウスとは?
Blog Post

カテゴリー:ヒト化マウス

ヒト化マウスモデルとは何なのでしょうか? 一見簡単な質問ですが、これに対する最も一般的な答えは「それはモデルによる」です。「ヒト化」という用語にはいくつかの意味があり、それぞれの状況により意味が異なります。

最も広い意味で「ヒト化マウス」とは、ヒトの生物学的特徴を有するマウスを指します。具体的には、ヒトの遺伝子(ランダム導入やノックインによる)を発現するものや、ヒトの免疫細胞、組織、腫瘍、微生物叢などを持つマウスが該当します。またこれらの特徴を複数組み合わせたマウスを指すこともあります。

ヒト化マウスは、ヒトの要素を発現させることにより、非ヒト化マウスやin vitroモデルと比較して、ヒトの生物学的側面や病態生理をより正確に再現することができます。この精度の向上により、ヒト疾患に対するトランスレーショナル研究モデルが改善され、新規薬剤候補に対するヒトの反応を予測するための、より信頼性の高いプラットフォームが提供可能になります。その結果、ヒト化マウスのデータを利用する生物医学的ブレイクスルー(飛躍的進歩)の件数が増え、それが医薬品開発とIND申請(米国における治験届出制度の申請)の成功につながっています。1,2

ヒト化マウスの有用性と価値を考えると、新しい疑問や技術が生まれるにつれて、マウスを「ヒト化」する方法は拡大し続けると考えて間違いないでしょう。ジャクソン研究所(JAX)は現在、研究をサポートするために数種類のヒト化マウスモデルを提供しています。JAXが現在提供しているヒト化マウスの主なラインアップは以下の通りです。

 

JAXのヒト化マウスモデル

遺伝的にヒト化されたモデル:JAXのリポジトリ内のマウスのほぼ3分の1が遺伝的にヒト化されており、少なくとも1つのヒト遺伝子を発現しています。これらのヒト化マウスは、健康や疾患における特定のヒト遺伝子の機能や遺伝的変異を調べたり、ヒトの病気をより正確にモデル化したり、従来のマウスモデルよりもヒトの生理や病態をより忠実に模倣したモデルで治療薬を試験したりするための強力なプラットフォームとなっています。[ Learn more ] [ Search JAX Mice ]

CD34+造血幹細胞ヒト化モデル:CD34+造血幹細胞ヒト化マウスは、正常に機能するマウス免疫系を欠くモデルであり、ヒト造血幹細胞(HSC)が移植されています。これらの未熟なヒト幹細胞は、マウスの体内で分化・成熟して機能的なヒト免疫細胞になるため、ヒト免疫系の重要な側面をin vivoで正確に再現するモデルが得られます。このプラットフォームは、複雑なヒト免疫細胞相互作用の研究や、ヒト特異性の高い治療薬の信頼できる試験を行う長期研究(1年以上)をサポートしています。これらの免疫細胞ヒト化マウスは、造血、感染症、免疫学、免疫腫瘍学の研究のための貴重なツールです。[ Learn More ] [ View JAX CD34+ HSC Models ]

PBMCヒト化モデル:末梢血単核細胞(PBMC)ヒト化マウスは、正常に機能するマウス免疫系を持たないマウスに、成熟したヒト免疫細胞を生着させ、ヒト免疫系を発現させたマウスです。移植されたPMBCはヒトの体内で成熟したものであるため、マウスの宿主を異物として認識し、マウス組織に対する移植片対宿主病(GvHD)の反応を起こします。そのため、 GvHD 予防のための免疫抑制剤の試験に使用することができます。これらの成熟免疫細胞には、免疫治療薬や細胞治療薬の存在下でサイトカインを放出する能力があり、このサイトカインを測定することで、これらの治療薬が サイトカイン放出症候群(CRS) として知られる毒性反応を患者に引き起こす可能性を予測することができます。[ Learn More ] [ View JAX PBMC Models ]

ヒト担がんモデル:ヒト担がんマウスは、免疫不全NSG™またはNRGマウスにヒトのがん細胞株由来の異種移植片(CDX)、またはヒトの固形または液性腫瘍を移植したものです。JAXには、400を超える十分に特性が解明された固形の患者由来の異種移植片(PDX)のデータベースがあり、10種類の急性骨髄性白血病PDXが移植に利用可能です。これらのマウスは、医薬品開発のためのPOC(概念実証試験)や標的検証試験に用いられる費用対効果の高いプラットフォームです。[ Learn More ] [ View JAX PDX Models ]

Onco-hu®モデル:Onco-huモデルは、ヒト免疫細胞とPDXまたはCDXを共移植したマウスです。この共移植モデルは、臨床腫瘍微小環境を再現するプラットフォームであり、メカニズム研究や免疫調節薬候補の治療可能性のよりトランスレーショナルな研究に用いることができます。これらのOnco-huモデルでは、研究者はヒト免疫細胞とヒト腫瘍細胞間の相互作用を調べることができ、橋渡しを行う上での妥当性が一層高まることになります。[ Learn More ] [ View JAX Onco-Hu Models & Services ]

FcRnヒト化モデル:FcRnヒト化マウスは、IgG抗体の半減期を制御する重要なリサイクル機構であるヒト新生児Fc受容体(FcRn)のみを発現するように遺伝子操作されたヒト化マウスです。NHPモデルに匹敵する精度を備えたJAXのFcRnヒト化マウスは、抗体治療薬のヒトの薬物動態(PK)プロファイルを確実に予測するための迅速で(14日未満)、アクセスしやすい、コスト効率の高いプラットフォームを提供します。JAXには、HuPKポートフォリオの基盤である抗体ベースの治療薬、Fcバリアント、およびアルブミン結合体のPK解析を確実にサポートするための十分に特性が解明された一連のFcRnマウスモデルバリアントがあります。[ Learn More ] [ View JAX FcRn Models & Services ]

抗体探索のためのアトラスマウス:アトラスマウスは、ヒト抗体遺伝子配列の多様性をほぼ完全に網羅したキメラマウスヒト抗体を免疫接種時に産生するように作製された、遺伝的にヒト化されたマウスです。これらのキメラ抗体は、完全ヒト型モノクローナル抗体または二重特異性抗体治療薬へと効率的に改変することができ、抗体医薬品の創薬と開発を加速させることができます。[ Learn More ] [ View JAX Atlas Mice ]

 

References:

  1. https://ashpublications.org/blood/article/144/7/757/516007/ABBV-319-a-CD19-targeting-glucocorticoid-receptor
  2. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38437725/

 

英語原文: What is a (JAX) humanized mouse? at the Jackson Laboratory

一覧へ