光を求めて―加齢黄斑変性に対する細胞療法
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メイン州バーハーバーのJAXキャンパスのDr.マーティン・ペーラの研究室にある人工多能性幹細胞 (iPS細胞)の顕微鏡画像
ジャクソン研究所(JAX)で進められている新しい遺伝子治療のアプローチは、加齢黄斑変性(AMD)による視力低下を回復させる可能性があります。
AMDの約80%は「乾性(萎縮型)」ですが、このタイプには現在、効果的な治療法がありません。
主任研究者のDr. Martin Pera(マーティン・ペーラ)は、この状況を変えるための研究に取り組んでいます。
AMDは、網膜色素上皮(RPE)という組織が徐々に劣化することで発症します。RPEは、光を感じ取る細胞である光受容体に栄養を届ける重要な役割を担っています。このRPEが衰えると十分な栄養を供給できなくなり、その結果として光受容体が死滅し、視力が低下してしまいます。
AMDに対する現在の実験的な治療では、損傷したRPE細胞を、ヒト多能性幹細胞(さまざまな細胞に分化するよう誘導できる、実験室で培養された細胞)から作製した健康なRPE細胞に置き換える方法が試みられています。米国、日本、英国、イスラエルで進行中の初期臨床試験では、この治療法の安全性が示されており、移植された細胞が患者の体内で1年以上にわたり損傷なく維持されることが確認されています。
加齢黄斑変性に対する細胞療法
Dr.ペーラと彼のチームは、AMD治療の新しいアプローチを開発しています。この方法は既存の治療法を基盤としつつ、失われた網膜色素上皮と光受容体の両方を再生できる移植細胞を作製し、最終的にAMD患者の視力回復を目指すものです。Dr.ペーラのアプローチは、カエルやイモリなどの下等脊椎動物で確認されている再生生物学の原理に基づいています。これらの動物は、網膜を丸ごと失っても、光を感じる細胞やその他の視覚に関わる構造を再生する能力を持っています。一方で、哺乳類はこうした再生能力を失っています。Dr.ペーラは、この再生能力を哺乳類で再び引き出すことができれば、どのような治療の可能性が開けるのかを探求しているのです。
「現在のAMDの治療法はRPEを移植するもので、光を感じる光受容体そのものの移植は行われません。移植した細胞は、既に生じた視力低下を回復させることはできないと考えられ、他の網膜疾患の治療にも役立つ可能性は低いでしょう。しかし、この新しい細胞治療戦略は、こうした限界を克服するものです」と彼は述べました。
Dr.ペーラのプロジェクトは、失われた光受容体に代わる光受容体を移植し、最終的には視力低下を回復させる解決策を提供できる可能性をもつ、2つの課題に取り組んでいます。
- RPE細胞から光受容細胞へのリプログラミングは可能か?
JAXの研究者は、AMDの遺伝的原因を調べるため、幹細胞をRPE細胞へと日常的に転換しています。また、眼のマスター制御遺伝子の「オン/オフスイッチ」を備えた幹細胞株を構築しています。幹細胞からRPE細胞を作製した後、研究者たちは、どのマスター制御遺伝子がRPEを、光を感知する細胞へと変える鍵となるのかを調べます。 - 新たなRPE幹細胞を発見できるか?
JAX の眼科領域の研究者たちは最近、マウスRPE内に「幹細胞に類似した特性を持つ細胞」発見しました。これは、この細胞が他の種類の細胞になるよう誘導できる可能性を示唆しています。今後の研究では、この細胞をRPEと光を感知する細胞の両方に誘導できるかどうかを検証します。もしこの細胞がその両方に分化できることが確認されれば、この治療法はAMDに伴う視力低下を改善できる可能性が期待されます。
皆さまからの慈善的なご支援のおかげで、今年Dr.ペーラのプロジェクトが始動しました。今後、Dr.ペーラのチームが研究を臨床の現場に近づけ、将来の患者さんやご家族により良い治療の選択肢を提供していくうえで、こうしたご支援はこれからも欠かせないものとなるでしょう。
英語原文: Looking for light: Cell therapies for age-related macular degeneration


