「The Zebra and The Bear」が教えてくれること─希少疾患における協力の姿

カテゴリー:希少疾患

娘ウィローの超希少疾患のモデルマウスを観察するアンバー・オルセン

Amber Olsen(アンバー・オルセン)が娘を多重スルファターゼ欠損症から救うための取り組みは、ジャクソン研究所による革新的な研究によって支えられ、遺伝子治療を臨床試験へと進める一助となった。

アンバー・オルセンは、娘のウィローが多発性スルファターゼ欠損症(MSD)と診断された時、深い衝撃を受けました。MSDは極めて稀な進行性神経変性疾患で、子どもの発達能力を奪い、平均13歳で死に至ります。この病気の容赦ない進行を遅らせたり、止めたりするための承認された治療法はありません。

しかし、アンバーはその運命を受け入れることを拒みました。Apple TV、Prime Video、Google Play、YouTube、Vimeoで配信中のドキュメンタリー 「The Zebra & The Bear」 では、彼女のストーリーが紹介されています。この作品は、ウィローや彼女と同じような病気と闘う患者たちに困難を乗り越えるチャンスを与えるために、何百万ドルもの資金を集め、研究パートナーシップを築き、科学を前進させた一人の母親の並外れた決意を描いています。この動画には、ジャクソン研究所(JAX)の 希少疾患トランスレーショナルセンター(RDTC) が、遺伝子治療を含む新たな治療法の研究を通じて、アンバーの奮闘の道のりに大きな役割を果たした様子も映し出されています。

MSDは、SUMF1と呼ばれる遺伝子の変異によって引き起こされます。この遺伝子は、細胞が複雑な糖や脂肪を分解する酵素を「活性化」するために必要なタンパク質をコードしています。このタンパク質がないと、これらの分子が蓄積し、脳、肝臓、皮膚、骨格に広範囲にわたる損傷を引き起こし、その結果、発作、発達遅延、運動障害などの症状が現れます。

RDTC Vice PresidentのDr. Cat Lutz(キャット・ルッツ)は次のように述べています。「これらのライソゾーム病は、患者とその家族にとって深刻な影響を及ぼします。しかし、技術の進歩によって、これまで治療が困難だった希少な遺伝性疾患に対して、新しい治療法を活用できる可能性が生まれています。これらの治療法は病気を治療するだけでなく、将来的には完治へと導く希望を秘めています。」

Dr.ルッツと同僚の研究者たちは長年にわたりMSDを研究し、テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンターの研究者と緊密に連携してきました。RDTCでSenior Study Directorを務めるDr. Maximilliano Presa(マキシミリアーノ・プレサ)が率いる研究チームは、 患者と同じSUMF1遺伝子変異を持つ精密なマウスモデル を作製し、この疾患の進行メカニズムと治療法の可能性について研究者に強力な知見を提供しました。「動物モデルは新しい治療法を開発する上で重要なツールです。患者の遺伝子状態を正確に反映し、臨床症状を模倣したアバターマウスがあれば、遺伝子治療などの新しい治療法の安全性と有効性を最適な条件で検証できます」とDr.ルッツは述べています。

モデルを得たJAXの研究チームは、迅速に行動を起こしました。Dr.プレサは、骨髄移植と遺伝子治療という2つの大胆な治療法の試験に着手しました。ユナイテッドMSD財団(the United MSD Foundation)からの資金援助と、CRISPR/Cas9などの高度な遺伝子ツールを活用して疾患モデルを作製する JAX精密遺伝学センター からの助成金を受け、研究チームは2025年初めに 2つの研究成果 を発表し、MSD患者の家族に新たな希望をもたらしました。1つ目の研究では、マウスの骨髄移植を検証しました。この方法では臓器の毒素蓄積は改善されたものの、血液脳関門の影響で脳症状の完全な改善には至りませんでした。2つ目の研究では、脳脊髄液に直接投与する遺伝子治療でこの課題に取り組み、寿命を劇的に延ばし、神経学的症状を軽減することに成功しました。これらの成果は、MSDの治療の可能性に向けた大きな一歩です。アンバーの資金調達、連携構築、そして緊急性を強く訴える姿勢は、JAX内外での研究を活性化させる原動力となりました。ウィローは11歳になってから数か月後に残念ながら亡くなりましたが、彼女の闘いは伝説となり、診断当初には存在しなかった治療法の可能性をもたらしました。

この遺伝子治療法は現在、米国国立衛生研究所財団(FNIH)が運営する官民パートナーシップを通じて、臨床試験に向けて着実に進んでいます。

「新たな治療法は希少疾患を抱える患者とそのご家族に希望をもたらします。私たちが開発した遺伝子組み換えマウスは、こうした最先端の治療法を試験するための理想的なモデルです。RDTCは、社内の専門知識に加え、この分野をリードする研究者との幅広い連携、さらに患者家族や各財団との緊密なパートナーシップにより、今後数年間で治療法の大きな進展を実現していくでしょう」とDr.ルッツは述べています。

ネズミのように小さくてありふれた存在が、希少疾患と闘う患者家族にとってこれほど大きな意味を持つとは、想像もしていませんでした。これは、小さなことでも世界を変えることができるという気付きです。苦しみの中から何か良いものを生み出しましょう」とアンバーは動画の中で語っています。

「The Zebra & The Bear」は、親、科学者、財団、そして公的機関が、このような希少疾患を治療可能なものにするという共通の目標のもとに結集することで、どれほど大きな成果を生み出せるかを示す証です。ウィローの家族のような患者家族とJAXの研究者との連携によって、その可能性は日々高まっています。

「The Zebra and The Bear」の動画は 英語原文記事 からご覧いただけます。

 

英語原文: What “The Zebra and the Bear” teaches us about collaboration in rare disease

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