あなたの骨髄は何歳ですか?
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カテゴリー:老化
By Mark Wanner
免疫蛍光染色画像には、中年マウスの大腿骨の形態と細胞構成が詳細に示されています。
画像提供: Dr.ジェニファー・トローブリッジ
ジャクソン研究所の研究者たちは、遺伝的に同一のマウスでも造血幹細胞の老化の進行が異なることを明らかにし、加齢が進むなかで健康を維持するための新たな道筋を示しました。
[メイン州バーハーバー 2024年6月20日]私たちの骨髄は、骨の中にある脂肪分の多いゼリー状の物質で、毎日5,000億個の新しい血液細胞を静かに生産している目に見えない製造所です。その製造プロセスは造血幹細胞によって稼働しており、体内のさまざまな種類の血液細胞を生成するとともに、血液の生産ライン全体をスムーズに稼働させるために自らを再生しています。
他の複雑なシステムと同様に、造血幹細胞も老化するにつれて機能を失い、その過程で血液がんなどの重篤な疾患のリスクが発生します。加齢関連疾患を発症するリスクは、個々人で異なることがわかっています。一方で、意外なことに、造血幹細胞の老化が人によって異なるかどうかについてはほとんどわかっていません。
「50歳の人たちが部屋いっぱいに集まると、完全に白髪の人もいれば、白髪混じりの人もいるでしょう。そして、白髪がまったくない人も数人いるでしょう。理屈の上では、造血幹細胞の機能にも同じような違いが見られると予想されますが、これまでそれを直接研究した人はいません」と語るのは、Dattels Family Endowed Chairであり、ジャクソン研究所のProfessorである Dr. Jennifer Trowbridge (ジェニファー・トローブリッジ)です。
これにはちゃんとした理由があります。これらの造血幹細胞は非常に希少であるため、研究者は通常、複数の人の幹細胞を集めて、ひとまとまりにして研究します。 Blood に掲載された論文で、Dr.トローブリッジとその同僚は、遺伝的に同一の中年マウス9匹の単一細胞レベルで造血幹細胞を研究し、骨髄微小環境の微妙な変化が個々のマウスの造血幹細胞をどのように老化させるかを初めて詳しく観察しました。
Dr.トローブリッジと研究チームは、マウスはすべて同じ月齢であるにもかかわらず、個々のマウスの骨髄にある造血幹細胞の老化の進み方が異なっていることを発見しました。しかし、それだけではありません。研究チームは、ヒトにも存在する2つの成長因子の活性に基づいて、造血幹細胞の機能を予測することができました。
2つの成長因子、KitlとIgf1は、骨髄微小環境で幹細胞を取り囲む、間葉系間質細胞(MSC)によって生成されます。Dr.トローブリッジは、個々のマウスのこれらのMSCのRNAトランスクリプトームをプロファイリングすることにより、これらの成長因子の減少が造血幹細胞の加齢関連分子の仕組みと相関していることを発見しました。
「生産される成長因子の量は幹細胞の機能低下と直接相関しており、骨髄中の他の細胞よりも造血幹細胞のほうが著しく変化が大きいことが分かりました。これは進行する老化過程の、まさに細胞レベルでのスナップショットです」とDr.トローブリッジは語っています。
遺伝的に多様で、ライフスタイルも様々であるヒトの場合、造血幹細胞の老化のばらつきは、注意深く管理された動物モデルよりもさらに大きい可能性があるとDr.トローブリッジ氏は説明しています。今回の研究では、幹細胞の細胞老化が直接的に健康被害を引き起こすかどうかについては調査していませんが、このようなばらつきがマウスとヒトの両方において、健康状態に幅広く影響を及ぼしている可能性があります。
ジャクソン研究所について
ジャクソン研究所は独立した非営利の生物医学研究機関であり、米国国立がん研究所指定のがんセンターを有し、米国、日本、中国の各地に3,000名を超える従業員を擁しています。 JAXの使命は、疾患に対する精密なゲノムソリューションを探索し、世界中の生物医学 コミュニティに活力を与えることです。その根底にあるのは「人々の健康を改善したい」という私たち皆の探求心です。詳細については、 www.jax.org をご覧ください。
JAXメディア担当: Cara McDonough cara.mcdonough@jax.org
英語原文: Trowbridge studied hematopoietic stem cells at the single cell level (jax.org)