肺上皮細胞における加齢に伴う免疫機能不全の定義
Research Highlight
By Sophia Anderson
2022年12月1日、ファーミントンで開催された米国がん協会がん活動ネットワークCTフォーラムで講演するジャクソン研究所のDr. Karolina Palucka
写真提供:クロエ・ポアソン
Dr. Karolina Paluckaは、1,300万ドルの新たな支援を受けて、ウイルス感染と闘う気道上皮細胞の機能に、加齢がどのような影響を与えるかをさらに研究していきます。その研究により、高齢者への予防的介入のための新たな標的をみつけることができる可能性があります。
肺の防御の最前線を調査する
気道の表面を覆う気道上皮細胞は、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの呼吸器ウイルスをはじめとする、有害な可能性のある物質から肺を保護します。インフルエンザ流行期や新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミック流行期に見られるように、65歳以上の人は特にウイルス感染症にかかりやすいと言われています。高齢者においては自然免疫系と適応免疫系が時間の経過とともに変化することは明らかですが、特に肺組織に存在する免疫細胞で何が起こっているのか正確にはよくわかっていません。呼吸器ウイルスが感染してウイルスが複製される最初の部位として、肺の環境内で気道上皮細胞がどのように機能し、他の細胞にどのような影響を与えるかをさらに理解することが重要です。
ジャクソン研究所のProfessorであり、米国国立がん研究所(NCI)指定の基礎研究の がんセンター の所長でもある Dr. Karolina Palucka は、ヒト免疫学を専門としています。2019年に「ヒト免疫学協力センター」プログラムにおいて、国立アレルギー感染症研究所から1,100万ドルの 助成金 を支援されたDr. Paluckaは、専門分野の垣根を越えて結成されたチームを率いて、ウイルス感染に対する免疫反応において気道上皮細胞と肺のマイクロバイオームがどのような役割を果たしているかを調査しました。今回、1,300万ドルの新たな 支援 を得て、Dr. Paluckaと研究チームは、肺上皮細胞の抗ウイルス反応と加齢に伴う変化を調査する予定です。
研究チーム は、気液界面(ALI)培養を利用して、気道上皮細胞が病原性ウイルスにどのように反応するか、また感染と闘う際に他の宿主免疫細胞と肺の常在菌との間でどのような相互作用が起こるかを研究する予定です。ALI培養物を使用することで、研究チームは、正常な免疫応答と高齢者の肺上皮細胞で起こる変化の両方の分子メカニズムを機能させる特定の遺伝子、経路、転写応答、エピジェネティック因子、RNA修飾を分析できるようになります。この研究により、重篤なウイルス感染を防ぐための新しい標的やアプローチが見つかる可能性があります。さらに、加齢に伴う炎症を引き起こすメカニズムを解明することにより、Dr. Paluckaの発見は肺がんの生物学的特性についてさらなる知見をもたらす可能性があります。
著者:Sophia Anderson
米国ジャクソン研究所Research Communications部門スペシャリストのSophia Andersonは、ジャクソン研究所のマルチメディアコンテンツのクリエイターです。SophiaはDiagnostic Genetic Sciencesで学位取得後、ジャクソン研究所に入所し、研究のコンセプトを説明するとともに、記事や映像を通じて、研究の背景にあるストーリーを伝えています。
英語原文: The $13 million will fund study on aging and epithelial cells (jax.org)