炎症と老化:AP-1複合体との関連
Research Highlight

By Sophia Anderson

ジャクソン研究所(JAX)の研究者は、加齢に伴い、2つのファミリーのタンパク質が常に活性化されるようになり、それにより慢性炎症を促進している可能性があることを明らかにしました。

免疫システムの老化

研究者たちは、炎症老化、つまり加齢に伴って増加する慢性的な炎症の状態の原因を理解しようと長い間努力してきました。炎症老化はさまざまな老齢疾患の原因であると考えられており、その特徴として血中および組織内の炎症誘導分子の発現量の増加、ならびに免疫系の組成および機能の変化があります。炎症老化は、老化の顕著な特徴の1つと考えられており、心血管疾患、アルツハイマー病、がんなど、加齢に関連するさまざまな病気と関連があると考えられていますが、この一般的によく見られる問題の原因は何なのかという疑問が生じます。

少し複雑な複合体の研究

Aging Cell に掲載された論文で発表されたように、JAXのAssociate Professor Dr. Duygu Ucar(ドゥユグ・ウカル) と研究チームは、活性化プロテイン1(AP-1)複合体と呼ばれる重要なタンパク質集合体に焦点を当てることで、この疑問に対して可能性のある回答を特定しました。AP-1複合体は、炎症誘導シグナルを放出することにより、ストレスやウイルス感染などの外部刺激に対する細胞反応を調節する重要な因子です。Dr.ウカルと研究チームは、年齢とともに起こる生体内分子全体の最も重要な変化に焦点を当てるために、多様なオミクス解析を使用して複数の細胞および免疫組織タイプをプロファイリングしました。この研究では、人間の健康な老化と不健康な老化を表すために、長寿命マウス系統と短寿命マウス系統の両方を使用しました。

炎症の兆候を特定する

この共同研究により、最も重要な老化シグナルである、マウスモデルと細胞型にわたるAP-1複合体における2つの遺伝子ファミリー「Jun」と「Fos」の活性化が明らかになりました。年齢とともに、これらの遺伝子はより活性化し、その結果、免疫細胞が活性化されて、対応するタンパク質の産生が増加します。ここで朗報として言えるのは、AP-1複合体において常に活性化されているJunファミリーとFosファミリーが免疫老化のバイオマーカーとして機能する可能性があると研究者らが考えていることです。

著者:Sophia Anderson
米国ジャクソン研究所Research Communications部門スペシャリストのSophia Andersonは、ジャクソン研究所のマルチメディアコンテンツのクリエイターです。 SophiaはDiagnostic Genetic Sciencesで学位取得後、ジャクソン研究所に入所し、研究のコンセプトを説明するとともに、記事や映像を通じて、研究の背景にあるストーリーを伝えています。

英語原文: Inflammation and Aging: Ties to the AP-1 Complex

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