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コロニー管理
~正しい知識は転ばぬ先の杖~


コロニー管理方法について、みなさんはどうやって学びましたか?先輩に教わった方法を引き継いでいたり、自分で調べて管理していたりする方も多いかと思います。問題が起こらなければ、その方法を見直す機会はないかもしれません。ぜひ、このコラムを最後まで読んでください。読み進めるうちに『あぁ、良かった』となった方は、今の方法を続けてください。もし、『おっと、、、』となった場合、これを機に軌道修正していきましょう!

コロニー管理の基本

コロニーを管理する上で大切なことはいくつもありますが、まずは系統の特性を把握し、どのような交配で維持すべきなのかをしっかりと理解することからはじめましょう。兄妹交配で維持できる系統、兄妹交配をしてはいけない系統、変異アレルのノンキャリアまたは野生型と交配すべき系統など、系統の遺伝的背景や表現型によって交配パターンが異なります。また、挿入遺伝子のリピート数管理や、特殊な飼料が必要な系統もあります。これらの情報を系統データシートや既報から収集してください。

次に、コロニーの記録を正しく取りましょう。問題が発生した場合、記録をたどることで系統を危機から救出できます。では、何を記録すべきでしょうか。まずは、正しい系統名と遺伝型です。特に、系統名はフルネームで書いておきましょう。次に、世代数の記録です。遺伝的浮動による亜系統化を防ぐためにとても大切です。戻し交配の世代数や交雑または兄妹交配の世代数、凍結維持などを以下の方法で記録します。

N:
Number of backcross generations 戻し交配の世代数
F:
Filial or inbreeding generations 交雑または兄妹交配世代数
p:
Cryopreserved 凍結維持
+:
施設への導入前後で世代数を分ける場合
?:
世代数の履歴が不明な場合

例①  N10p+F3
戻し交配が10世代目で凍結維持をし、他機関にて生体復元し兄妹交配を3世代行った。

例②  ?+N8F5
以前の世代数は不明だが、導入してから戻し交配を8世代、兄妹交配を5世代行った。

兄妹交配

兄妹交配は、同一の両親を持つ同世代の雌雄を交配することです。出生日が異なっていても、同一の両親を持つ同世代同士の交配は、兄妹交配になります。

図1 兄妹交配の例

兄妹交配以外の場合

系統特性により、兄妹交配をすべきではないことがあります。例えば、2つの近交系をかけ合わせた交雑(ハイブリッド)背景で、背景系統が表現型に影響する場合、ハイブリッドの状態で維持する必要があります。ALSマウスモデルの  B6SJL-Tg(SOD1*G93A)1Gur/J は、その最たる例です。この系統は、C57BL/6JとSJL/Jのハイブリッドが背景であるため、これらのF1ハイブリッドであるB6SJLF1/Jと交配することで雑種強勢がかかり、表現型が維持されています。もし、間違えて兄妹交配やF2ハイブリッドと交配すると、遺伝的背景に大きなばらつきが生じてしまいます。表現型を維持するために、系統に適した交配を続けることが大切です。

ペディグリー管理

ペディグリー管理とは、同じ系統のコロニーを複数の家系(ペディグリー)に分けて管理することです(図2)。もし、ペディグリー2で望まない変異が見つかった場合(図2 ピンク)、ペディグリー2を閉じ、ペディグリー1の個体から新しくペディグリーを作ることができます。ペディグリー管理の利点は、コロニーを守るためのバックアップとなることです。ここで注意すべきは、ペディグリー間で交配をしないことです。ペディグリーを混ぜてしまうと、どこで変異が入ったのか不明確で、コロニー全体に影響が出てしまいます。ペディグリー管理では、ペディグリー内で交配を続けることが大切です。

図2 ペディグリー管理の例

戻し交配

マウスの亜系統 のコラムで、亜系統化を防ぐためにコロニーをリフレッシュする最も伝統的な方法として、戻し交配を挙げました。背景系統と交配させるだけと思われがちですが、適当に交配していては時間がかかります。性染色体を基準にして3ステップ(図3)で戻し交配をしましょう。まずは、元の系統の雌と背景系統の雄を交配しN1を得ます。次に、Y染色体が置き換わったN1の雄と背景系統の雌を交配し、N2を得ます。N2では、性染色体両方が置き換わった雄が得られます。さらに、その雄と背景系統の雌を交配することで、全ての産仔の性染色体が置き換わります。この3ステップの戻し交配は、約1年かかります。世代数を記録し、十分な余裕を持って戻し交配を始めることが大切です。

図3 戻し交配の3ステップ

参考

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