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混合背景とコンジェニック
~背景系統の混ざり具合~


マウスの命名法のコラム で最初にご紹介したのが、混合背景とコンジェニックでした。この2つの違いをご存知でしょうか?同じアレルを持っているけれども、混合背景とコンジェニックの2系統があったとしたら、あなたはどちらを選びますか?「なんとなく…」で選んでしまうと、系統維持で苦労したり、期待していた表現型が見られなかったりとなかなか骨が折れる将来になってしまうかもしれません。ぜひ、この2つの違いを理解し、あなたの研究目的に合った選択をできるようになっていただけたらと思います。

1.混合背景、コンジェニックとは

混合背景とコンジェニックの違いをとても簡単に言うと、2つまたは複数の背景系統の混ざり具合の違いになります。なぜ背景系統が混ざるのでしょうか。遺伝子改変マウスは、様々な近交系系統を用いて作製されています。例えば、ES細胞で作製された標的変異系統の多くは、129亜系統由来のES細胞とC57BL/6亜系統の胚を用いています。得られたキメラ個体をC57BL/6にかけ合わせるため、遺伝的背景は129とC57BL/6の混合背景になります。標的アレルの機能解析において、背景系統の影響を最小限にすることは、多くの場合望ましいと考えられています。背景系統をひとつの近交系系統に置き換える過程で、混合背景からコンジェニックへと変化していきます。元の系統を「ドナー」、置き換える系統を「レシピエント」と言います。レシピエントへの戻し交配を繰り返すことで、ドナーゲノムの割合を減らし、レシピエントゲノムと標的アレルだけの状態にできるだけ近づけているのです。戻し交配が4世代までを混合背景、5世代以上続けると初期コンジェニック、10世代以上では伝統的なコンジェニックになります。混合背景で系統を維持するためには、兄妹交配やF1またはF2ハイブリッドと交配させ2つの背景系統の割合が変化しないように注意が必要です。ちなみに、近交系が3系統以上混ざっている場合やアウトブレッド系統が混ざっている場合、または遺伝的背景が不明の場合は、STOCK背景になります。 混合背景やSTOCK背景からコンジェニックにすることで、系統維持はとても楽になります。しかし、それにより表現型が変化してしまう場合もあるのです。安易にコンジェニックにするのではなく、必ず既報などを調査してください。もし報告がない場合は、戻し交配前後の表現型を比較することをおすすめします。

2.コンジェニックまでの道のり

コンジェニックにたどり着くためには、ただひたすら戻し交配をすることになります。戻し交配の世代数がN4までの状態は混合背景となり、背景系統名は2つの系統略称をセミコロン( ; )でつなぎます。N5からは、ドット( . )でつなぎ系統名ではコンジェニックとなりますが、まだ初期の段階です。N10になるとレシピエントゲノムの割合が99.91%に達し、伝統的なコンジェニックとなります。戻し交配し、標的アレルの有無を調べ、また戻し交配をするという単純な工程です。しかし、N10にたどり着くまでに約30か月もの時間を要することを理解し計画を立ててください。

図 戻し交配世代数とレシピエントゲノムの割合

3.スピードコンジェニック

前述のとおり、コンジェニックにたどり着くまでに約30か月かかります。もっと効率よく戻し交配できたとしたら、研究プロジェクトの期間短縮にもつながります。とても長い道のりを約半分にできる方法が、スピードコンジェニックです。この方法では、ゲノムスキャンでレシピエントゲノムの割合が高い個体を選別し、次の戻し交配に用います。これにより、効率よくコンジェニックにすることができます。このスピードコンジェニックのパワーを最大限引き出すためには、戻し交配で得られる産仔数をできるだけ増やすことです。母数が大きいほど、レシピエントゲノムの割合が高い個体が複数得られる確率も上がります。地道な戻し交配のみに比べ、ゲノムスキャンなどで費用はかかりますが、半分の期間で99%以上をレシピエントゲノムに置き換えられることは魅力的です。

参考

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