情報ライブラリ

Resource Library

マウスの命名法
~系統名に隠された意味を読み解こう!~


何かしら遺伝子に改変が入ったマウスの系統名は、まるで暗号のようで難解な場合があります。マウス系統の名付けルールである命名法を学ぶことで、複雑な系統名を理解できるようになります。類似系統が数多く存在する場合、系統名での違いがたったの一文字のこともあります。系統名には重要な情報が含まれていますので、論文執筆の際はぜひフルネームを用いてください。ジャクソン研究所は、International Committee on Standardized Genetic Nomenclature for Miceが定めたガイドラインに沿って命名しています。また、必要に応じて系統名を修正しています。ここでは、代表的な種類の命名法をご紹介します。

背景系統 ~混合背景、コンジェニック、STOCK、交雑種~

系統の遺伝的背景は、得られた実験データを正しく解釈する上でとても大切です。変異またはトランスジーンを持つドナー系統とレシピエントとなる近交系系統を交配した場合、戻し交配した回数で表記が変化します。戻し交配が5回未満の場合、混合背景となり2つの系統略称をセミコロン( ; )でつなぎます。戻し交配が5回以上の場合、コンジェニック背景となりドット( . )でつなぎます。近交系が3系統以上混ざっている場合やアウトブレッド系統が混ざっている場合、または遺伝的背景が不明の場合は、STOCKと表記します。2つの異なる近交系を交配して得られた系統を交雑種と言います。この場合、2つの系統略称を雌由来、雄由来の順につなげて、次に世代数(第一世代の場合、F1)を表記します。

・混合背景の例

混合背景の例
近交系マウスの略称例

・コンジェニック背景の例

コンジェニック背景の例

・F1交雑種の例

F1交雑種の例

 

自然変異、化学物質による誘発変異

自然変異と化学物質による誘発変異の系統名は、背景系統名の後に変異を持つ遺伝子情報とその系統を維持している研究機関コード(ラボコード)を表記します。変異を持つ遺伝子の遺伝子シンボルおよび変異体アレル情報は、イタリック体表記にします。遺伝子シンボルは、潜性遺伝子の場合は全て小文字にし、顕性、不完全顕性、共顕性遺伝子の場合は、最初の文字のみ大文字にします。変異アレルは、遺伝子シンボルに上付きで表記します。

・自然変異の例

自然変異の例
ラボコードの例

 

ノックアウト、ノックインなど

ノックアウト、ノックインなどの系統では、自然変異の命名法に準じます。変異を持つ遺伝子の遺伝子シンボルに上付きで対立遺伝子情報を表記します。エンドヌクレアーゼによる変異を意味する「em」や標的変異を意味する「tm」で変異の種類を指定し、その変異のシリアル番号、そのアレルを作出した研究機関コード(アレルのラボコード)をつなげて表記します。

・ノックアウトの例

ノックアウトの例

 

トランスジェニック

トランスジェニック系統では、イタリック体は用いません。トランスジェニックを意味する「Tg」を先頭にし、その後に挿入されたトランスジーンの遺伝子シンボルを括弧内に表記します。括弧の後にファウンダーのライン番号、アレルのラボコードを表記します。

F1交雑種の例

 

参考

情報ライブラリ-コラム一覧へ