患者由来の臓器チップ技術でがん研究の未来を設計する
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カテゴリー:がんその他

病気をより深く理解するために科学者が使用する臓器チップシステム

若手研究者のDr. Daniel Peñarete‑Acosta(ダニエル・ペニャレーテ=アコスタ)は、がんと細菌の関係性を解明するための新しい研究技術の開発に取り組んでいます。

大腸がんは若い世代で増加しており、特に30〜40代で前兆なく発症するケースが多く認められています。遺伝要因や食生活、生活習慣が発症に影響する一方で、腸内細菌がその一因となり得ることを示す研究も近年増えています。ジャクソン研究所(JAX)の博士研究員である Dr.ペニャレーテ=アコスタは、最先端の技術を活用して、大腸がんにおける免疫系とマイクロバイオームの相互作用に焦点を当てた研究を進めています。

Dr.ペニャレーテ=アコスタの研究は、工学、微生物学、がん生物学が交わる領域に位置しています。JAXのジャリリ研究室では、患者由来の組織を用いた臓器チッププラットフォームを開発し、細菌がヒトの腫瘍と長期にわたってどのように相互作用するのかを調べています。この研究の目的は、単なる「相関関係」の発見にとどまらず、「因果関係」を明らかにすることにあります。つまり、細菌ががんと関連しているかどうかだけでなく、個々の患者において細菌がどのようにがんの発症や進行に関わっているのかを理解することを目指しています。

「私にとって最も魅力的なのは、これまで不可能だった方法で、生物学的な相互作用を研究できる新たなツールを開発している点です」と、Dr. ペニャレーテ=アコスタは語りました。

Dr.ダニエル・ペニャレーテ=アコスタ(ジャリリ研究室の博士研究員)

これまで、細菌とがんの相互作用を研究する際には、単純化された細胞培養実験や動物モデルに依存せざるを得ませんでした。こうした従来のアプローチでは、複雑で長期的な相互作用を詳細に観察することが難しいという課題がありました。研究者たちは、がん細胞を細菌に曝露して相互作用を調べてきましたが、わずか数時間で細菌ががん細胞を死滅させてしまうため、長期的な観察は事実上不可能でした。しかし、臓器チップシステムの登場によって、状況は大きく変わりつつあります。

USBスティックほどの大きさの臓器チップは、中空構造の内部に微細な流路を備えた透明なプラスチック製デバイスで、生きたヒト細胞が組み込まれています。これらの流路には常に液体が流れ、血液循環や呼吸運動、さらにDr.ペニャレーテ=アコスタの研究が対象とする「腸内の物理的ストレス」など、人体内の環境を再現できます。静的なペトリ皿とは異なり、臓器チップを用いることで、細胞が隣り合う細胞やマイクロバイオーム、免疫系と絶えず相互作用する、より生体に近い「動的な」環境を再現できる点が大きな特徴です。

細菌が大腸がんに関与していることは以前から指摘されていましたが、ヒトにおけるその役割を証明することは容易ではありませんでした。Dr.ペニャレーテ=アコスタは、患者から直接採取したサンプルを用いることで、細菌と腫瘍の相互作用を数日から数週間にわたって維持することに成功しています。これは、ヒトの体内で起こる現象に非常に近い時間スケールです。

「この技術により、ついにヒトのサンプルを用いてヒトに関連するデータを収集し、細菌とがんの関係について、相関関係だけでなく因果関係があることを証明できるようになります。現在私たちが手にしている技術によって、これらの相互作用が長期的にどのような影響を及ぼすのか、ようやく理解できるようになったのです」と彼は述べました。

これは技術的に高度な作業で、膨大な反復作業と操作が必要です。Dr.ペニャレーテ=アコスタは、これらのプラットフォームを複数世代にわたり自ら設計・構築し、初期のプロトタイプから多数の実験を同時並行で行えるシステムへと拡張してきました。現在、彼が構築したプラットフォームでは16の実験が同時に稼働しています。

個別化医療への道のり

Dr.ペニャレーテ=アコスタが、がん研究へと進む道のりは、決して平坦なものではありませんでした。学部課程では化学工学を専攻し、その後は微生物学も学び、当初はバイオテクノロジーとバイオ燃料に重点を置いていました。テキサスA&M大学で取り組んだ卒業研究では、細菌の病原性やマイクロ流体技術(微小スケールで流体を精密に制御する技術)に触れました。この経験が、後に現在の研究につながる基盤となりました。しかし、最終的に彼の研究への関心を大きく方向転換させたのは、大学院課程中に経験した家族との別れでした。

祖母が、がんで突然亡くなったことをきっかけに、彼は博士課程での研究の方向性を大きく転換し、その後迷うことなく生物医学研究の道を進むことになりました。「自分の本当の情熱は、生物医学研究にあると確信しました」と彼は語っています。

指導教官の支援を受けて、Dr.ペニャレーテ=アコスタはバイオメディカルエンジニアリングの博士課程に進み、マイクロ流体工学、計算シミュレーション、流体力学を組み合わせ、がんに関連する生物学的プロセスを6年間にわたり研究しました。その紆余曲折を経た道のりが、最終的に2023年、彼をJAXのジャリリ研究室へと導くことになりました。

彼は最近、The Robert E. Leet and Clara Guthrie Patterson Trust Mentored Research Award(ロバート・E・リートおよびクララ・ガスリー・パターソン財団メンタード研究助成賞)を受賞しました。この受賞により、今後2年間で合計20万ドルの研究支援が提供される予定です。

JAXで研究を進める大きな利点は、提携先のUConn Health(コネチカット大学医療センター)を通じて、患者由来のヒトサンプルを利用できることだと、Dr.ペニャレーテ=アコスタは話しています。彼が現在取り組んでいる研究は、大腸がんの手術中に採取された組織を用いたものです。腫瘍サンプルだけでなく、同じ患者から採取した隣接する正常組織も使用しています。

「このアプローチにより、病気の多様性を研究できるだけでなく、より個別化された視点から分析することが可能になります」と彼は語りました。こうした研究は、「なぜ」一部の人が他の人よりもがんを発症しやすいのか、そして個々の患者にとって最適な治療法は何かを理解する助けとなります。

Dr.ペニャレーテ=アコスタは、今後10年間で、患者由来のサンプルを用いた臓器チップ技術を活用する研究者がますます増え、創薬プロセスが加速するだろうと見ています。また、疾患を引き起こすメカニズムを理解することは、病気の予防や治療介入の方法を探るうえで、研究者にとって重要な手がかりになると考えています。

 

英語原文: Engineering the future of cancer research with patient-derived organ-on-a-chip technology

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