JAXはARPA-Hプロジェクトに参加し、AI主導のがん研究および処方薬研究を通じて個別化医療を変革します
Media Release
カテゴリー:がん

【コネチカット州ファーミントン 2024年11月12日】ジャクソン研究所(JAX) は、医療高等研究計画局 (ARPA-H:Advanced Research Projects Agency for Health) が資金提供する2つの主要プロジェクトのパートナー機関であり、データ駆動型アプローチとAIによる生物医学研究の推進を目的とした合計6,000万ドルの資金を受けています。これらのプロジェクトでは、学際的なチームが、がん治療に立ち向かい、薬の処方を最適化するための最先端技術の開発に取り組んでいます。
このハイリスク・ハイリターンの2つのプロジェクトは現在も進行中です。ひとつは、個別化された3Dがんモデルを作製するための自動化プラットフォームの開発を目指したもので、もうひとつは、個人差が薬物の代謝と反応にどのように影響するかを調べることを目的としたものです。
3Dがんモデル
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校が主導し、ARPA-Hから2,100万ドルの資金援助を受けているプロジェクトは、3次元がんモデルを作製するための新しい自動化プラットフォームを開発するプロジェクトです。JAXのProfessor兼President Emeritusである
Dr. Edison T. Liu
(エディソン・T・リュー)は、乳がん、技術革新、定量科学の分野で数十年にわたり蓄積した専門知識をこの取り組みに注いでいます。従来、がん研究は2次元培養または動物モデルに依存していましたが、これではヒトの腫瘍の複雑さを完全には捉えることができません。近年、科学者たちはオルガノイド (ヒトの組織の反応をよりよく模倣する3次元の集合体) に注目していますが、オルガノイドには課題があります。
「現在のオルガノイドの問題は、成長が遅く、スケールアップが難しいことです。がん研究にインパクトを与えるには、数千個のオルガノイドを迅速に作製できなければなりません」とDr.リューは語っています。
このプロジェクトは、AIとロボット工学を使用してこれらの問題に対処し、自動化システムにより3次元培養で腫瘍細胞を増殖させ、増殖パターンを監視して条件を最適化することを目指しています。主な焦点は、オルガノイド作製のスケールアップとバイオセンシングに関する技術的な課題を克服することです。Dr.リューのチームは、これらのオルガノイドが最適に成長する条件と、それらを最適に使用する方法を明らかにするために、トランスレーショナル研究に関する専門知識を提供します。オルガノイド作製を合理化することで、研究者たちはさまざまな種類の腫瘍に対する複数の薬剤の効果をより効率的に研究し、個々の患者の腫瘍細胞を迅速に増殖させ分析することで個別化されたがん治療法を開発できます。
個別化された薬物反応
また、JAXのAssociate Professorである Dr. Shuzhao Li は、コロンビア大学が主導しARPA-Hから3,950万ドルの資金提供を受けているプロジェクト「医薬品最適化のための個別メタボロームおよびエクスポソーム評価(IndiPHARM:Individual Metabolome and Exposome Assessment for Pharmaceutical Optimization)」に参加しています。このプロジェクトは、薬物反応の個人差を理解することを目指しています。現在、承認プロセスでは、薬効のメカニズムが理解されていないことがよくあります。
「人間が薬物を代謝し、薬物に反応する仕組みに影響を与える要因は多種多様です。遺伝、食事、環境への曝露の全てが要因となります」とDr. Liは説明しています。
Dr. Liの研究チームは、コロンビア大学、エモリー大学、ブラウン大学、ハーバード大学、メイヨークリニックの研究者と共同で代謝障害のある患者の血液サンプルを分析します。新しいデータは、身体の状態を反映する生化学的特性であるメタボロームとエクスポソームから得られます。質量分析法を使用して、個人のマイクロバイオーム、食事、汚染物質への曝露に関する情報を提供する薬物代謝物と分子を検出できます。これらのデータにより、さまざまな要因が薬物代謝と薬効にどのように影響するかが明らかになり、より効果的で個別化された治療につながる可能性があります。
テクノロジーを通じて生物学を進歩させる
ARPA-Hがこれらのハイリスク・ハイリターンのプロジェクトを支援するのは、生物医学のブレークスルーを推進するという使命があるからです。AI、ロボット工学、計算生物学などの革新的なアプローチを採用することで、これらのプロジェクトはがん治療と薬物処方を変革し、医療がますます個別化される未来への道を切り開いていく可能性があります。
「これらのプロジェクトはどちらも、テクノロジーが生物学を発展させるというJAXの根幹をなす信念を強調するものです。JAXは、定量科学と新しいテクノロジーを生物学の発展に活用してきた長い歴史があります。そのため、生物学者がエンジニアと連携してテクノロジー開発を進めなければならないプロジェクトのサポートにJAXが選ばれるのは当然のことです」とDr.リューは語っています。
JAXと共同研究者たちがこれらの壮大なプロジェクトを開始するにあたり、その目標は明確です。テクノロジーと生物学の橋渡しをして、目に見える健康上の恩恵をもたらすことです。ARPA-Hの支援を受けて、これらの取り組みは、世界中の患者の個別化医療と健康状態の改善に向けた大きな一歩となるでしょう。
ジャクソン研究所について
ジャクソン研究所は独立した非営利の生物医学研究機関であり、米国国立癌研究所指定のがんセンターを有し、米国、日本、中国の各地に約3,000名の従業員を擁しています。その使命は、疾患に対する精密なゲノムソリューションを探索し、世界中の生物医学コミュニティに活力を与えることです。その根底にあるのは「人々の健康を改善したい」という私たち皆の探求心です。詳細については、 www.jax.org をご覧ください。
JAXメディア担当:Cara McDonough cara.mcdonough@jax.org