インフルエンザ感染の除去と免疫システムの調節におけるナチュラルキラー細胞の役割
Research Highlight

By Sophia Anderson

michael stitzel

ジャクソン研究所のDr.シルケ・パウスト 写真提供: Cloe Poisson

Dr. Silke Paust(シルケ・パウスト)は、インフルエンザウイルス感染の除去と感染時の健康細胞損傷の防止における肺のナチュラルキラー細胞が果たす役割を研究しています。

インフルエンザウイルスは世界の公衆衛生に重大な脅威をもたらし、毎年数百万人の感染と数十万人の死亡を引き起こしています。インフルエンザウイルスは、急速に変異して体の免疫システムを回避し、標的を絞った治療法に耐性を持つようになる能力があるため、依然として手強い敵です。ジャクソン研究所ProfessorのDr. Silke Paust (シルケ・パウスト)は、ナチュラルキラー(NK)細胞に焦点を当てた新しい免疫療法の開発と試験を専門としています。NK細胞は、病原体やがん細胞を体から除去する役割を担う白血球の一種です。 パウスト研究室 は最近、主にアナフィラキシーなどのアレルギー反応を引き起こすことで知られる免疫細胞の一種であるマスト細胞が、A型インフルエンザウイルス(IAV)に感染した肺においてNK細胞の抗ウイルス機能の抑制に重要な役割を果たしていることを発見しました。アメリカ国立アレルギー・感染症研究所からの新しいR01 助成金 の支援を受けて、Dr.パウストの研究室は、新しい抗ウイルス免疫療法の潜在的な標的として、インフルエンザウイルス感染における NK細胞の機能を調節する新しい経路をさらに評価する予定です。

免疫システムのバランスをとる作用

以前の研究で、パウスト研究室は、インフルエンザウイルス感染が、野生型マウスとT細胞およびB細胞欠損マウス(Rag1-KO)の両方でインターロイキン10(IL-10)と呼ばれる免疫調節サイトカインを誘発することを観察しました。サイトカインは化学物質のメッセンジャーとして機能し、免疫システムネットワーク内の他の細胞に影響を与えます。今回のケースでは、肺マスト細胞はIL-10を産生することにより、ウイルス感染に応答する肺NK細胞の能力を抑制しました。Rag1-KO マウスにおいて、この経路を治療的に遮断したところ、NK細胞は致死的な感染を有意に低減し、ウイルスの除去に寄与しました。同じ結果がヒト肺細胞の検体でも観察されました。

しかし、IL-10の役割はその後も続きます。Dr.パウストは、IL-10誘導経路を欠くマウスでは、感染が治まった後に免疫病理反応と呼ばれる免疫浸潤と組織損傷が長期にわたって観察されることを発見しました。これは、インフルエンザに対する免疫応答の調節においてIL-10 が微妙なバランスを維持していることを明確に示しています。

「感染症に対する効果的な治療法を開発するには、免疫病理反応を軽減しつつ免疫のバランスをとることが重要です。体の組織に害を及ぼさずに感染を除去できる微妙な均衡を見つけ、最終的には病原体を確実に根絶し、宿主の健康をしっかりと維持することが重要です」とDr.パウストは語っています。

より深く探求する

パウスト研究室は、免疫調節がマウスとヒトの肺のNKおよびT細胞の機能をどのように調節するのか、またこれらの免疫チェックとバランスがどのようにして体の組織を傷つけることなくインフルエンザウイルス感染を効果的に除去するのかをさらに調査する予定です。この研究は、有害な免疫病理反応を回避しながら感染を除去するための免疫反応を増強する新規治療薬の開発を最終目標として、インフルエンザのような急性ウイルス感染症に免疫システムがどのように反応するかを理解する上で重要な意味を持つと考えられます。

著者:Sophia Anderson
米国ジャクソン研究所Research Communications部門スペシャリストのSophia Andersonは、ジャクソン研究所のマルチメディアコンテンツのクリエイターです。SophiaはDiagnostic Genetic Sciencesで学位取得後、ジャクソン研究所に入所し、研究のコンセプトを説明するとともに、記事や映像を通じて、研究の背景にあるストーリーを伝えています。

英語原文: Silke Paust R01 roles of Natural Killer cells in influenza clearance (jax.org)

一覧へ