新たな分析が描き出す、より的を絞ったアルツハイマー病の研究と創薬のための、かつてない包括的なロードマップ
Media Release
カテゴリー:神経科学
ジャクソン研究所の研究者たちは、7月28日に開催されたAlzheimer's Association International Conference(アルツハイマー病協会国際会議)に先立ち、既知の遺伝子とタンパク質すべてを対象として、アルツハイマー病の発症における相対的な役割と重要性について、初めて包括的に順位付けをしました。
【メイン州バーハーバー 2024年7月24日】ヒトゲノムの研究から、タンパク質がどのようにコードされているかの分析やRNA発現のモニタリングまで、研究者たちは認知症の根底にある複雑な遺伝的および細胞的メカニズムについて、急速に理解を深めつつあります。しかし、ここには問題があります。新しいテクノロジーによってアルツハイマー病の研究に無数の道が開かれていますが、どの道を選んで研究を進めることが効果的な治療につながるかを事前に知ることができないということです。
「潜在的なターゲットは無数にありますが、どれを狙えばよいのか分からないのです。医薬品の開発は時間がかかり、費用もかかるため、こうした新たな知見を活用するには、効果的に優先順位を付ける方法が必要です」と、この研究を率いたジャクソン研究所(JAX)のBernard and Lusia Milch寄付講座教授の Dr. Greg Carter (グレッグ・カーター)は言います。
現在、Dr.カーターとJAXの同僚たちは、スタンフォード大学医学部、エモリー大学、セージ・バイオネットワークスのパートナーと共同で、まさにそのことに取り組んでおり、病気の発症におけるすべての遺伝子とタンパク質の相対的な役割と重要性を初めて総合的にランク付けしました。この研究は、7月28日に開催されたアルツハイマー病協会国際会議に先立ち、 Alzheimer’s & Dementia(アルツハイマー病と認知症)の7月号 で報告され、同会議でも発表されました。
「これはアルツハイマー病患者の脳に関するこれまでで最も包括的な研究です。私たちは遺伝学やオミクスを含む複数の分野の研究を患者の生涯にわたって統合しており、これまで可能とされた研究よりもはるかに大規模な研究を行っています」とDr.カーターは語りました。
研究チームは機械学習を利用して、20以上の大規模遺伝子研究の知見と、約2,900の脳のマルチオミクス解析を統合して重ね合わせ、何千もの潜在的な治療介入のターゲットを特定しました。ターゲットはその後、アルツハイマー病に寄与すると考えられる生物学的メカニズムを反映した19の「バイオドメイン」に分類されました。
Dr.カーターと研究チームが求めていたのは、区別なく遺伝子とタンパク質のターゲットを羅列しただけの長いリストではなく、各ターゲットが特定の治療仮説に関連付けられており、その仕組みを理解しやすく、実験検証の候補を特定しやすくするものです。
研究チームはまた、アルツハイマー病の初期段階で役割を果たしている可能性のあるターゲットをフラグ付けし、発症前の介入のための新しい診断および治療ツールの開発を支援することにも成功しました。「これは非常に重要でありながら、非常に困難でもあります。私たちのデータのほとんどは死後の脳から得られます。これは、すべてが焼失した後に森林火災の出火元を推測しようとするようなものでした。しかし、私たちのコンピューターモデリングは、病気の進行を効果的に巻き戻し、後期の症状に対応する初期マーカーを特定してくれます」とDr.カーターは述べました。
このアプローチはすでに重要な知見を生み出しており、その中には細胞の原動力であるミトコンドリアがアルツハイマー病の初期段階で重要な役割を果たしている可能性があるという新たなエビデンスも含まれています。研究チームはこのバイオドメインでいくつかの有望なターゲットを発見しており、ミトコンドリアの機能がアルツハイマー病の非常に強力な初期指標であり、つまり病気の進行の重要な要因である可能性があります。
研究結果とその完全なデータセットは、アルツハイマー病研究のリスク軽減を目的としたアメリカ国立衛生研究所(NIH)出資コンソーシアムの一部であるEmory-Sage-SGC-JAX TREAT-AD Centerを通じて公開されており、研究者やバイオテクノロジーの先進的な開発者に、より効率的でターゲットを絞った将来の研究を支援する基礎ツールを提供します。「私たちは非常にオープンなアプローチをとっています。バイオテクノロジー企業や製薬企業がこれを選んで使いたいのであれば、そうすることができますし、そうしてくれることを願っています」とDr.カーターは語っています。
ジャクソン研究所について
ジャクソン研究所は独立した非営利の生物医学研究機関であり、米国国立がん研究所指定のがんセンターを有し、米国、日本、中国の各地に3,000名を超える従業員を擁しています。 JAXの使命は、疾患に対する精密なゲノムソリューションを探索し、世界中の生物医学 コミュニティに活力を与えることです。その根底にあるのは「人々の健康を改善したい」という私たち皆の探求心です。詳細については、 www.jax.org をご覧ください。
JAXメディア担当: Cara McDonough cara.mcdonough@jax.org