ミトコンドリア機能障害が2型糖尿病の初期症状の可能性として特定される
Research Highlight

By Sophia Anderson

michael stitzel

Dr. Michael Stitzelは、2型糖尿病とそのリスク指標についての解明を進めていますが、そのような因子として細胞の動力源であるミトコンドリアの機能不全が新たに加わりました。

オルガネラに関する研究

2型糖尿病 (T2D)は、筋肉、脂肪、肝臓の細胞がインスリン抵抗性を持つと発症する複雑な病気です。T2Dは米国の医療システムと公衆衛生システムの両方に非常に大きな負担をかけており、患者数は約3,700万人(約10人に1人)とされています。T2Dの謎を解明するために、ジャクソン研究所Associate Professorの Dr. Michael Stitzel (マイケル・スティッツェル)と彼の研究チームは、この疾患の危険因子と遺伝的基盤を解明するために革新的なゲノム研究を行っています。彼の研究は、ヒトの膵臓および代謝細胞の調節メカニズムを解読すること、ならびに健康な人と2型糖尿病患者の間で遺伝子発現と細胞機能がどのように異なるかを特定することに焦点を当てています。米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所からR01 助成金 の支援を受けて、Dr.スティッツェルは、細胞代謝を促進するミトコンドリアを研究し、ミトコンドリアの機能不全をどのようにT2D発症の早期指標として利用できるかを解明しています。

ミトコンドリアの影響

ミトコンドリアは、細胞の生化学反応を促進するのに必要な化学エネルギーの大部分を生成し、膵島β細胞(グルコースレベルのバランスをとり、インスリンを産生する細胞)に燃料を供給し、維持する上で中心的な役割を果たします。研究結果から、前糖尿病患者ではミトコンドリア機能不全がT2Dの発症に先行することが示唆されています。さまざまな変異がこの疾患に関連しており、正常な遺伝子発現パターンに影響を与え、膵臓細胞内のミトコンドリアの健康を損なうことが示されています。 Dr.スティッツェルの研究室 は、ゲノム分析と細胞分析を組み合わせることにより、ヒト膵島細胞とT2Dマウスモデルの両方を研究し、遺伝子発現パターンがミトコンドリアの機能と膵島細胞の障害にどのような影響を与えるかを解明しようとしています。

アクションプランの2つの柱

Dr.スティッツェルの一番の研究対象は、ゲノムの非コード領域内にあります。これらの領域には一塩基多型(SNP)が含まれていますが、DNAの一塩基は人によって異なります。細胞内の遺伝子制御を変化させると思われるSNPが、T2Dの原因として特定されています。これらのSNPは活性遺伝子の発現を調節するため、ミトコンドリアの健康状態の悪化を引き起こす主な要因であると予想されます。SNP、調節エレメントおよびエフェクター遺伝子の関連性を調べるために、Dr.スティッツェルは、特別な CRISPR (Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)遺伝子編集技術であるCRISPR-QTL、およびゲノムワイド関連解析(GWAS)を使用して、ミトコンドリア機能に影響を与えるこれらのゲノム修飾が、ゲノム環境の中のどこに隠れているか、その正確な位置を明らかにしようとしています。彼はまた、これらの特定された遺伝子変化が膵臓β細胞の血糖調節、機能、代謝にどのように寄与するかを研究するつもりです。

この研究は、遺伝的変異とT2Dとの間の新たな関係を確立してくれることでしょう。Dr.スティッツェルの研究は、この疾患の分子メカニズムと細胞メカニズムへの知見を提供するとともに、新たなリスク指標を特定することで、T2D関連の膵島細胞不全を予防するための新たな治療標的や治療戦略の特定につながる可能性があります。

著者:Sophia Anderson
米国ジャクソン研究所Research Communications部門スペシャリストのSophia Andersonは、ジャクソン研究所のマルチメディアコンテンツのクリエイターです。SophiaはDiagnostic Genetic Sciencesで学位取得後、ジャクソン研究所に入所し、研究のコンセプトを説明するとともに、記事や映像を通じて、研究の背景にあるストーリーを伝えています。

英語原文: JAX's Michael Stitzel has identified dysfunction in the mitochondria as a risk for Type 2 diabetes

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