タンパク質の変化から見えてくる老化のプロセスと性差についての知見
Research Highlight

By Sophia Anderson

Dr. Gary Churchill(ゲーリー・チャーチル)と研究チームは、加齢に伴う衰えの特徴的な兆候を特定することに取り組んでいます。彼らは、年齢と性別に応じたタンパク質の変化を10種類の組織で特定しました。

加齢 に伴い、体内の多くの組織でタンパク質の量が減少します。この全身のタンパク質の損失は自然な老化プロセスの一部ですが、それにより多くの病気のリスクが高まります。これらのタンパク質が病気のメカニズムにどのように寄与しているかを調べるためにプロテオミクス研究を利用することで、タンパク質の健康な状態と異常な状態を、比較的容易に分析できます。しかし、これよりはるかに難しいのは、これらのタンパク質が特定の年齢でどのように変化するか、異なる組織でどのように存在するか、性別でどのように異なるかを明らかにすることです。

Cell Reportsに掲載された最近の 研究 では、ジャクソン研究所(JAX)のProfessor Dr. Gary Churchill (ゲーリー・チャーチル)とワシントン大学のDr. Devin Schweppe(デビン・シュウェップ)が研究チームを率い、さまざな組織に共通する加齢に伴うタンパク質の変化を特定するために、タンパク質量を分析しました。 Dr.チャーチルのラボ では、雌雄両方のC57BL/6Jマウスの10種類の組織でタンパク質量を分析しました。その結果、加齢とともに変化した10,250個のタンパク質が認められ、その多くは種類の異なる複数の組織で検出されました。

では、その変化はどのような影響をもたらしたのでしょうか? 加齢に伴うタンパク質の変化は、免疫系、細胞呼吸、代謝、プロテオスタシス(タンパク質生産の機能性とバランスの維持に関与する制御ネットワーク)に変化をもたらすことが観察されました。特筆すべき知見として、13種類のタンパク質が10種類の組織すべてで一貫して検出され、個々のマウスの免疫応答に対して高い特異性を示しました。これら13種類のタンパク質は、調べたすべての組織で見つかったので、それぞれのマウスに固有の感染に対する組織間反応があることを示唆しています。Dr.チャーチルらはまた、タンパク質複合体の変化が年齢と性別によって異なることも発見しました。彼らの研究結果は、腎臓、肝臓、脂肪、骨格筋などの組織内の特定のタンパク質に対する年齢と性別の交互作用を明らかにし、老化の全体像を理解するために雌雄両方を研究することの重要性を強調しました。

この研究によるデータは、より広く研究コミュニティにおける対話のための材料となるものです。今後は、より幅広い年齢層と、集団特有の違いをさらに組み込むことで、老化プロセス中のタンパク質変化の根底にあるメカニズムを完全に理解するのに役立つでしょう。

Dr.チャーチルの 以前の研究 では、遺伝学的背景が非近交系マウスのタンパク質量にどのような影響を与えるかを調査し、遺伝的に多様な マウス多能性幹細胞 の広範なプロテオミクス分析も行いました。

著者:Sophia Anderson
米国ジャクソン研究所Research Communications部門スペシャリストのSophia Andersonは、ジャクソン研究所のマルチメディアコンテンツのクリエイターです。
SophiaはDiagnostic Genetic Sciencesで学位取得後、ジャクソン研究所に入所し、研究のコンセプトを説明するとともに、記事や映像を通じて、研究の背景にあるストーリーを伝えています。

英語原文: Protein changes provide insight into the aging process and sex differences

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