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ラットロタウイルス

ラット乳仔下痢症
Infectious Diarrhea of Infant Rats :IDIR

 

分類

RNA ウイルス、エンベロープをもたない

 

Reoviridae

 

感受性動物種

ラット。ヒト、そしてブタはおそらく異なる種のロタウイルスに感染する。

 

頻度

不明。実験用ラットおよび野生ラットにおいては、きわめてまれであるようだ。

 

伝播経路

伝播経路は、経口感染(糞口感染)である。ウイルスは、器材、環境中の塵埃、またおそらくヒトとの接触を介して伝播する。ラット乳仔下痢症は、B 群ロタウイルス感染症であるが、このウイルスがヒトに感染することはまれである。しかし中国において、B 群ロタウイルスの大規模流行が数回起こっている。

 

臨床症状および病変

ラット乳仔における自然感染では、成長不良、下痢、肛門周囲の皮膚炎がみられる。死亡する個体はほとんどいない。病理組織学的には、14 日齢以下の動物において、腸細胞における空胞形成、絨毛の鈍化がみられることがある。しかし、このような病変の診断学的特異性については疑問の余地がある。

 

診断

診断はむずかしい。B 群ロタウイルスに対する抗体は、A 群ロタウイルスの抗原とは交差反応を起こさない。したがって、マウスロタウイルス(EDIM)の抗体検査法を使うことはできない。大部分の実験動物供給業者は、B 群ロタウイルスの検査をおこなっていないし、必要な試薬も市販されていない。
しかし、感染の蔓延の疑いがあるコロニーを調べるために、糞便を用いたPCR を利用することができる。

 

実験への悪影響

IDIR ウイルスの感染は、若齢のラットを使用する実験に悪影響を及ぼす。IDIR ウイルスが感染すると、腸における吸収ならびに腸管内の酵素の濃度が変化する。

 

予防と治療

動物飼育室から野生ラットを排除しなければならない。本感染症を撲滅するためには、子宮摘出または胚移植による再構築(クリーン化)が代表的な方法である。環境中において、ロタウイルスが安定して長期間生存するということに最も留意しなければならない。界面活性剤や酸化殺菌剤を併用しながら、化学薬剤を用いて徹底的に除染することを推奨する。感染動物と直接接触した器材は、オートクレーブ滅菌または冷滅菌により処理をするとよい。

 

文献

  • Baker DG. Natural Pathogens of Laboratory Animals: Their effects on research. Washington, D.C.: ASM Press; 2003. 385 pp.
  • Fox JG, Anderson LC, Lowe FM, and Quimby FW, editors. Laboratory Animal Medicine . 2nd ed. San Diego: Academic Press; 2002. 1325 pp.
  • Percy DH, Barthold SW. Pathology of Laboratory Rodents and Rabbits . Ames: Iowa State University Press; 2007. 325 pp.

 

翻訳:順天堂大学国際教養学部 久原 孝俊
©2009, Charles River Laboratories International, Inc.

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