情報ライブラリ

Resource Library

PDF版資料のダウンロード

 

ラットポリオーマウイル ス-2

Rat Polyomavirus-2(RPyV2)

 

要旨

呼吸器経路ならびに動物との直接接触を介して伝播する。免疫機能が正常なラットにおいては、臨床的な疾病はあまりみられないが、RPyV2 に対する抗体は、MFIA®、ELISA、またはIFA などのような免疫学的検査によって検出することができる。ウイルスは、環境サンプル、あるいは排気ダスト(Exhaust Air Dust = EAD®)、糞便、体表スワブ、もしくは口腔 スワブを利用したPCR によって、容易に検出することができる。

 

分類

DNA ウイルス、エンベロープをもたない

 

Polyomaviridae

 

感受性動物種

ラット

 

頻度

抗体が検出される実験用ラットの頻度は、低い中程度である。臨床的な疾病は、免疫不全ラットにおいてのみみられる。

 

伝播経路

ラットポリオーマウイルス-2(RPyV2)は、呼吸器経路を介して伝播する。マイクロアイソレーターケージの中において、RPyV2 に感染しているSCID ラットと同居させた未感染CDラットは、PCR 陽性となり、その後抗体陽性となった。したがって、このウイルスは、直接接触を介して動物のあいだに拡散することが確認された。

 

臨床症状および病変

正常なラットにおけるRPyV2 の自然感染では、臨床症状はみられない。しかし、免疫不全のSCID ラットおよびヌードラットにおいては、臨床的な呼吸器疾患がみられる。X 連鎖重症複合型免疫不全症(X-SCID)ラットにRPyV2 が感染すると、生殖能力の低下、急性呼吸困難(Pneumocystis carinii との重感染の場合)、あるいは播種性のウイルス封入体病がみられる。

 

診断

ポリオーマウイルスの抗原性はきわめて強く、抗体価は急速に上昇する。抗体は、MFIA®、ELISA、またはIFA によって検出することができる。抗体が陽性になったときは、進行中の実験を中断する前に、抗体の再検査をしたり、あるいはPCR によって確認したりすることを強く推奨する。RPyV2 のDNA を検出するためのPCR として、RPyV2 のVP1遺伝子を標的とした(半定量的などの)リアルタイムPCR(TaqMan® プローブ法) を利用することができる。開放型ケージを使用している飼育室の環境サンプル、またはIVC ラックの適切な排気ダストサンプル(EAD®、たとえば、プレナムのスワブや囮( おとり) 動物を収容しているケージのフィルターなど)を使ってPCR をおこなうことができる。あるいは、感染している免疫不全動物および免疫機能の正常な動物に安楽死処置を施す前に、動物から糞便、体表スワブ、口腔スワブ(オプション)を採取して、PCR 検査をおこなうこともできるであろう。

 

実験への悪影響

現在のところ、免疫機能が正常なラットにおけるRPyV2 の感染に関する情報は限られているが、免疫不全ラットにおいては、臨床的な疾病がみられる。

 

予防と治療

野生ラットは、RPyV2 感染における保有動物の役割を果しているのであろう。野生齧歯類の侵入をコントロールしなければならない。飼育している動物の血清検査を定期的におこない、そして導入動物の検疫をおこなうことを推奨する。界面活性剤や酸化殺菌剤を併用しながら、化学薬剤を用いて徹底的に除染することを推奨する。感染動物と直接接触した器材は、オートクレーブ滅菌または冷滅菌により処理をするとよい。ポリオーマウイルスは、環境中において安定して生存し、組織浮遊液中においては、2 か月以上も生存する。凍結融解過程、エーテル、70℃ 3 時間の加熱、0.5% ホルマリンにも耐える。床敷、そしてポリオーマの特徴として 、エアロゾルからも回収することができる。

 

文献

  • Identification and Characterization of Novel Rat Polyomavirus 2 in a Colony of X-SCID Rats by P-PIT Assay . Lora H. Rigatti, Tuna Toptan, Joseph T. Newsome, Patrick S. Moore, Yuan Chang, Division of Laboratory Animal Resources, University of Pittsburgh School of Medicine, Pittsburgh, Pennsylvania, mSphere.2016 Dec 21;1(6). pii: e00334-16. doi: 10.1128/ mSphere.00334-16. eCollection 2016 Nov-Dec.
  • Genome Sequences of a Rat Polyomavirus Related to Murine Polyomavirus, Rattus norvegicus Polyomavirus . Bernhard Ehlers, Dania Richter, Franz-Rainer Matuschka, Rainer G. Ulrich, Journal ASM, September/October 2015, Volume 3 Issue 5.
  • Polyomavirus-associated Prostatitis in Wistar Han Rats Following Immunosuppression in a Chronic Toxicity Study . Katherine Masek- Hammerman, Thomas P. Brown, Walter F. Bobrowski, Lindsay Tomlinson, Marie Debrue, Laurence Whiteley, and Zaher Radi, Toxicologic Pathology, 2017, Vol 45(5), 589-592
  • A Naturally Transmitted Epitheliotropic Polyomavirus Pathogenic in Immunodeficient Rats: Characterization, Transmission, and Preliminary Epidemiologic Studies . Cynthia Besch-Williford, Patricia Pesavento, Shari Hamilton, Beth Bauer, Beatrix Kapusinszky, Tung Phan, Eric Delwart, Robert Livingston, Susan Cushing, Rie Watanabe, Stephen Levin, Diana Berger, Matthew Myles, 2017 Toxicologic Pathology, 2017, Vol 45(5), 593-603
  • Identification and Characterization of Novel Rat Polyomavirus 2 in a Colony of X-SCID Rats by P-PIT Assay . Lora H. Rigatti, Tuna Toptan, Joseph T. Newsome, Patrick S. Moore, Yuan Chang, mSphere (Clinical Science and Epidemiology) 2016, Vol 1 (6), 1-13

 

翻訳:順天堂大学国際教養学部 久原 孝俊
©2018, Charles River Laboratories International, Inc.

情報ライブラリ一覧へ