Research Highlight
【日本語版】老化、フレイル、そして私たちの体内のマイクロバイオーム

By Mark Wanner

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私たち人間は、自分の力だけで健康とウェルビーイングを維持して生きていると考えがちです。しかし、研究者が近年ますます認識しつつあるように、私たちのマイクロバイオーム (私たちの体の表面と内部に生息する何兆もの微生物) が、私たちの健康とさまざまな病気に対する感受性に重要な役割を果たしています。そして、私たちが年をとるにつれて、マイクロバイオームも変化し、時間の経過とともに健康に重要な影響を及ぼします。

ジャクソン研究所 (JAX) のAssociate Professorである Dr.ジュリア・オー は、マイクロバイオーム、特に皮膚に定着する微生物を研究しています。これまで、老化と腸内微生物叢の関連が研究されてきましたが、口腔や皮膚など、体の他の部分にある微生物群集の変化についての知見は、ほとんどありませんでした。さらに調査するために、Dr.オーと彼女のチームは、コネチカット大学のCenter on Agingの教授であるDr.ジュリー・ロビンソンと医学博士のDr.ジョージ・クヘルと協力して、高齢者の皮膚、口腔、および腸のマイクロバイオームを若・中年者と比較する研究を行いました。

高度看護施設に住む虚弱な高齢者と、地域在住高齢者を対象とした独自の研究デザインにより、グループ間のマイクロバイオーム違いに最も関連しているのが、実年齢ではなくフレイルの程度であることが明らかになりました。もう一つの驚くべき発見は、グループ間のマイクロバイオームの違いが、腸や口腔ではなく、皮膚で最も顕著であったことです。さらに、皮膚には、感染症の潜在的な危険因子が最も多く存在しました。研究チームは、 Nature Agingに掲載 された「Associations of the skin, oral and gut microbiome with aging, frailty and infection risk reservoirs in older adults(高齢者における皮膚、口腔、および腸のマイクロバイオームと老化、フレイル、および感染リスクの病原巣との関連)」でその研究結果を発表しました。

マイクロバイオームの世代間差

研究グループは、高度看護施設に住む 65歳以上の高齢者の1グループと、施設に入らずに生活している別の対照グループに調査を行いました。彼らは1か月の調査期間中の3時点で47人から合計1,385のサンプル (皮膚1,072、口腔159、便 (腸)154) を採取しました。そして、これらを95人の健康な若・中年者 (18~55 歳)の対照サンプルと比較しました。さらに研究チームは訪問する度に、詳細な病歴を聴取し、食事と衛生に関するアンケートを実施し、臨床で一般的に用いられている方法でフレイルを評価しました。高度なメタゲノムシーケンシングとアルゴリズムを使用してマイクロバイオームを再構築することにより、病原性を有する種と亜株、抗生物質耐性遺伝子ならびに病原性因子を特定するために必要な解像度を得ることができました。

いずれの身体部位についても最も顕著な違いが見られたのは、介護施設に住む虚弱な高齢者でした。マイクロバイオームの多様性と安定性など、微生物群集に大きな違いが観察されましたが、これは、おそらく個人の老化の程度の違いを反映しています。これらの要因は、病気の感受性と感染リスクに幅広く関連しています。さらに研究チームは、機械学習ツールを使用して、老化とフレイルの潜在的な微生物バイオマーカーを特定しました。たとえば、腸内では、虚弱な高齢者はクロストリジウム属の細菌の割合が有意に高く、肥満や食事の違いに関連する主要な細菌門の割合が変化していました。皮膚においては、若・中年者では、健康な皮膚環境を調節する重要な皮膚微生物であるアクネ菌が脂漏部に多くかつ一貫して見られました。アクネ菌はいずれの高齢者のグループでも著しく減少しており、介護施設に住む高齢者で多く認められた種のいくつかは感染リスクの増加に関連していました。

フレイルと微生物

興味深いことに、研究チームが、種の構成、安定性、多様性などのさまざまなマイクロバイオームの特徴を評価したところ、実年齢単独ではそれらのいずれとも関連していませんでした。一方、皮膚上の多数の細菌種の相対的存在量または有無は、フレイルと有意に相関していました。重要な点として、虚弱な高齢者の皮膚には、臨床的に重要な潜在的病原性の種と、一般的な抗生物質に対する耐性に寄与する可能性のある抗生物質耐性遺伝子が多く認められました。したがって、数の上では大きく上回る口腔および腸の微生物叢と比較しても、皮膚の微生物叢がフレイルに関連する感染リスクの主要な病原巣であると明らかになったことは注目に値します。

「この研究は、健康への悪影響に対する顕著な脆弱性を特徴とする、加齢に伴う生理学的機能低下の症候群であるフレイルについての理解を深めます」とDr.クヘルは言っています。

まとめると、この研究結果は、高齢者の健康状態の全般的な低下を示唆する目印として、皮膚に注目すべきであることを示しています。実際、著者らは、マイクロバイオームの不安定性と、体のさまざまな部位間の微生物の割合の相違に基づいて、Frailty-Associated Dysbiosis of the Skin (FADS:フレイルに関連する皮膚のディスバイオシス) を定義することを提案しています。この概念は、FADSやその他の要因が高齢者の疾患リスクをどのように高めるかをよりよく理解しようとする将来の研究に役立つ可能性があります。

「今回の研究は、コネチカット大学Center on Agingの臨床チームおよび研究チームと、Jackson Laboratory for Genomic Medicineとの間の類まれな分野横断的な取り組みでした」とDr.オー は言います。「このエキサイティングな研究は、マイクロバイオームが老化や慢性疾患にどのように寄与するかを理解するための重要なステップであり、ひいては生涯にわたって健康を改善するうえで介入の標的とすべきものを特定することを可能にします。」

英語原文
https://www.jax.org/news-and-insights/2022/October/aging-frailty-and-microbiomes

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