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エンセファリトゾーン・クニクリ

Encephalitozoon cuniculi
(ECUN, E. cuniculi )

 

分類

偏性細胞内寄生性単細胞真核生物、グラム陽性、現在、Microsporidia 綱に属するきわめて特殊化した真菌であると考えられている

 

Encephalitozoonidae

 

感受性動物種

すべての哺乳動物種が本真菌感染に感受性である。ウサギ、モルモット、およびマウスが本真菌のおもな保有動物であると考えられている。ヒトにおいては、一般的に、重度免疫不全患者(HIV 感染者または臓器移植患者)にみられる感染症であると報告されている。

 

頻度

ペットのウサギにおいて、よくみられる。実験用ウサギや大部分の実験用げっ歯類においては、頻度は低い。モルモットにおいては、ときどきみられる。野生のウサギや野生のげっ歯類における頻度は、地理的条件によってさまざまである。

 

伝播経路

伝播は、尿中に排泄された、感染性の胞子を経口摂取することによる。ウサギにおいては、呼吸器を介した伝播もある。垂直感染がウサギにおいて報告されており、またモルモットにおいても、垂直感染の可能性が示唆されている。

 

臨床症状および病変

モルモットを含む大部分のげっ歯類において、不顕性感染である。免疫機能が低下した動物においては、感染は致死的になる場合がある。ウサギにおける臨床症状は、さまざまである。たとえば、臨床症状を示さず、剖検時に腎病変のみがみられる場合や、あるいは神経症状や眼症状がみられる場合もある。剖検時にみられる腎病変はきわめて微妙であるので、偶発的な所見であると誤診されることがある。
本真菌感染においてみられる典型的な病理組織学的所見は、肉芽腫であるといえる。感染後1 か月において、肺、肝臓、および腎臓に肉芽腫性病変が認められる。感染後1 か月以内で、腎臓において、通常は、尿細管内および尿細管周囲において、本真菌を容易に検出することができる。脳病変は、およそ感染1 か月以降にみられ、非化膿性巣状肉芽腫性髄膜脳炎として発現する。ブドウ膜炎や白内障を含む眼病変が、ドワーフウサギ(dwarf rabbit)において報告されている。

 

診断

本真菌感染のスクリーニングには、血清学的方法(MFIA®,ELISA, IFA)が利用される。腎臓や尿を材料としたPCR もおこなわれるが、スクリーニング法としては、汎用されていない。組織標本も診断のために有用である。とくに、組織中に本真菌が検出されれば、確定診断となる。

 

実験への悪影響

本真菌は、毒性学の研究やその他の多くの研究において検査の対象となる器官を標的にしている。たとえ動物が正常に見えても、感染した動物の成長は悪影響を受けるであろう。本真菌に感染している動物は、免疫系が変化している可能性があるので、実験に使用するのは疑問である。一方、免疫不全動物や免疫抑制動物は、本真菌の感染により重症化しやすい。本真菌感染によって形成される肉芽腫性病変は、実験処置による組織病変の評価を複雑なものにするので、誤った実験結果をもたらす可能性がある。重度な感染は、腎不全や神経症状をひき起こすことがあるので、そのような動物は、研究の目的に使用するのには適していない。

 

予防と治療

本真菌の胞子は、一般的な環境条件に対しては抵抗性を示す。乾燥した胞子は、22℃においては、少なくとも4 週間は生存することができる。湿潤で涼しい環境では、数か月間は生存することができる。オートクレーブ処理や酸化殺菌剤によって、本真菌の胞子を殺滅することができる。一般的に、同一の飼育室において、げっ歯類と一緒にウサギを飼育することは推奨できない。一般的な微生物モニタリングプログラムのなかに、定期的な本真菌感染モニタリングを含めるべきである。
本真菌感染を治療するための有効な治療法はない。感染後3か月になると、胞子の放出はまれになるので、コロニーを再構築(クリーン化)する場合には、高齢の動物を使用するのはよい方法であろう。一般的に、腎臓から胞子が放出される前に、血清抗体が陽性になるので、免疫機能が正常なコロニーにおいては、血清学的検査をおこなって、陽性個体を排除するのは効果的であろう。ウサギにおいては、エアロゾルによって本真菌が伝播する可能性があるので、血清学的検査をおこなって、陽性個体を排除する方法は、効果的ではない。ウサギにおいては、エアロゾル化した尿を吸引しないようにすることが肝要である。垂直感染の可能性があるので、子宮摘出によるコロニー再構築(クリーン化)を利用して本真菌を 排除するのは適切ではない。しかし、胚移植は有効であろう。
本真菌は、トレランスを誘導しない。したがって、子宮摘出によってコロニーの再構築(クリーン化)を試みた場合は、子動物の血清抗体が陽性になったときは、当該動物が感染したことを示しているので、ただちに安楽死処置をするべきである。

 

文献

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翻訳:順天堂大学国際教養学部 久原 孝俊
©2011, Charles River Laboratories International, Inc.

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