マウスアデノウイルス
Mouse Adenovirus
(MAdV-1, MAdV-2, MAV)
分類
DNA ウイルス、エンベロープをもたない
科
Adenovirus
感受性動物種
マウス
頻度
実験用マウスにおいては、まれである。
伝播経路
マウスアデノウイルスには、2 つの株がある。MAdV-1 とMAdV-2 である。MAdV-1 は、尿、糞便、あるいは鼻汁と直接接触することによって伝播する。MAdV-2 は、腸管に感染し、免疫機能の正常なマウスにおいては、少なくとも3 週間は排出される。いくつかのラットコロニーにおいて、MAdV-2に対する抗体が陽転したと報告されたが、これはおそらく他のウイルスによるものであろう。
臨床症状および病変
免疫機能が正常な成体げっ歯類におけるMAdV-1 とMAdV-2の自然感染においては、通常、臨床症状を示さない。哺乳マウスや免疫不全マウスにMAdV-1 やMAdV-2 を実験感染させた場合には、臨床症状がみられるであろう。MAdV-1、MAdV-2いずれにおいても、特徴的なA 型核内封入体が見られる。 MAdV-1 においては、封入体は副腎に見られる。MAdV-2 においては、封入体は小腸遠位端や盲腸で見られる。MAdV-2を実験感染させたラットにおいては、いかなる症状もみられなかった。
診断
MFIA
®/ ELISA およびIFA が、マウスおよびラットにおけるマウスアデノウイルス感染の診断のために利用される。MAdV-1 に対する抗体は、MAdV-2 と交差反応を示すが、MAdV-2 に対する抗体は、MAdV-1 と交差反応を示さない。多くの研究室において、MAdV-1 とMAdV-2 を混合した抗原を用いて診断をおこなっている。
実験への悪影響
MAdV-1 が感染すると、大腸菌による腎盂腎炎に対する感受性が亢進することが報告されている。
予防と治療
動物の住居、器材、ならびにスタッフの出入りを適切にコントロールし、そして野生 マウスの侵入を防御することによって、研究用コロニーがアデノウイルスに感染することを防ぐことができる。マウスアデノウイルスが感染しているコロニーからウイルスを撲滅するために、無菌的な子宮摘出や胚移植をおこなってコロニーを再構築(クリーン化)することは、有効な方法である。マウスアデノウイルスは、40℃の環境中において、およそ2 か月間安定して生存する。室温においては、2 週間生存し、そして37℃においては、1 週間生存する。酸化殺菌剤を使って、施設やオートクレーブ滅菌することができない器材を除染することができる。
文献
- Baker DG. Natural Pathogens of Laboratory Animals: Their effects on research . Washington, D.C.: ASM Press; 2003. 385 pp.
- Fox JG, Anderson LC, Lowe FM, and Quimby FW, editors. Laboratory Animal Medicine . 2nd ed. San Diego: Academic Press; 2002. 1325 pp.
- Fox J, Barthold S, Davisson M, Newcomer C, Quimby F, and Smith A, editors. The Mouse in Biomedical Research: Diseases . 2nd ed. New York: Academic Press; 2007. 756 pp.
- Percy DH, Barthold SW. Pathology of Laboratory Rodents and Rabbits . Ames: Iowa State University Press; 2007. 325 pp.
翻訳:順天堂大学国際教養学部 久原 孝俊
©2009, Charles River Laboratories International, Inc.