レオウイルス
Reovirus
(REO-3)
分類
RNA ウイルス、エンベロープをもたない
科
Reoviridae
感受性動物種
マウス、ラット、ハムスター、モルモット
頻度
動物実験施設内のコロニーにおいては、まれである。野生マウスおよび野生ラットにおいては、よくみられる。
伝播経路
本ウイルスは糞便中に排出され、糞口経路によって伝播する。その他の伝播経路として、直接接触、器材を介した経路、人間を介した経路、あるいは空気中に浮遊する粉塵を介した経路もある。一般的に、本ウイルスの伝播力は弱いものと考えられている。レオウイルスは、可移植性の腫瘍株を汚染していることが報告されている。垂直感染の報告はない。
臨床症状および病変
レオウイルスに自然感染した多くの動物は、臨床症状を示さない。若齢マウスにおいては、発育障害、下痢、油毛症、あるいは黄疸などの臨床症状がみられることがある。マウスの自然感染においては、病理組織学的に、急性瀰漫性の脳炎がみられることがある。
診断
一般的に、診断は血清学的検査(ELISA, MFIA
®, IFA)によっておこなわれる。あるいは、PCR によって診断をおこなうこともできる。
実験への悪影響
レオウイルスが自然感染しても、とくに実験に悪影響を及ぼすということは報告されていない。しかし、レオウイルスの実験感染においては、サイトカインの濃度、肺からの細菌のクリアランス、腫瘍の定着率、あるいは肝機能などが影響を受けることが報告されている。
予防と治療
動物実験施設に野生マウスが侵入しないような措置を講じなければならない。野生由来のマウスコロニーは、実験用マウスから隔離して飼育し、できるかぎり早く、再構築(クリーン化)しなければならない。マウス由来の腫瘍細胞、血清、あるいは細胞株のようなすべての生物学的製剤は、動物施設や実験室において使用する前に、本ウイルスによって汚染されていないことを確かめなければならない。腫瘍細胞、細胞株、あるいはマウス由来の生物製剤を接種された実験動物は、繁殖用の動物から隔離して飼育しなければならない。コロニーの日常の微生物モニタリングにおいて、定期的にレオウイルスに対する抗体を検査すべきである。
子宮摘出あるいは胚移植によるコロニーの再構築(クリーン化)は、感染症を撲滅するための最善の方策であるが、レオウイルス感染の場合にも、この方策が最善である。レオウイルスの感染対策について考慮するときは、本ウイルスが環境中において、安定して長期間生存するということに最も留意しなければならない。界面活性剤や抗ウイルス剤を併用しながら、化学薬剤を用いて徹底的に除染することを推奨する。感染動物と直接接触した器材は、オートクレーブ滅菌または冷滅菌により処理をする。
文献